映画「ワールドトレードセンター」を見る

 自分でもよく判らない衝動的なものに動かされて見てしまいました。1年前だったら拒否反応を示しただろうと思います。           
NYからの帰りにたまたま空港の売店で買った雑誌(Reader's Digest、Sep.'06)で,モデルとなっている2人のことを読んだこと、先にみた「ユナイテッド93」の作り方に違和感を持ったことから、どのような作品になっているか確認したかったことなどもありました。               

内容は港湾局警察の2人の生還者の物語です。事件に関する映像はたいへん抑制されていて好感を持って見ていました。TVで未だに繰り返される、飛行機の衝突シーンとビルの崩落シーンは全く出てきません。しかし衝突個所の炎上シーンはありました。ストーリーとしては不可避だったのかもしれませんが、出来ればもう少しロングショットにしてほしかった。そして「ダイブ」とおもわれるシーンはせりふで充分でしょう。

4人の警官が、南北棟を結ぶ地下通路を、酸素ボンベをカートに載せて救援に向かっていたとき、最初のビルの崩壊がおこり瓦礫の中に閉じこめられます。さらに2回の崩壊によって、最終的に生存者は2人になってしまいます。身動きでき無い状態で炎に苦しむ彼らと、親族が集まって心配し励ましあう彼らの家族が交互に描かれます。(後者は私たちの実体験であり、フラッシュ・バックしてしまいそうでした)     
極限状態で彼らを支えたものが家族への愛だったことが印象的です。
 夜に入り捜索は中止されますが、立入り禁止を破って進入した海兵隊員が音を頼りに彼らを発見し、危険を冒してのレスキュー作業によって彼らは救出されます。                            

 彼らについて見るかぎり、ハッピーエンドの映画です。「それなのに」と考えることが無ければ。ここでは素直に犠牲者数が2名増えなかったことを喜びたいとおもいます。                        
 しかし、現実はその後の彼らにとっても苦しいもののようです。誇りを持っていた仕事からは退職し、(前掲誌によれば)1人は記憶障害をともなうPTSDに悩まされています。危険をおかして困難な任務をこなしたレスキュー隊員の多くは呼吸器疾患を発症していることでしょう。 

 この映画をみて認識を改めたことが有ります。現地では消防署員、警察官等のいわゆる制服組を「ヒーロー」として特別扱いする傾向があります。たとえばメモリアルの氏名表示などにもその影響が出ています。正直のところ、私のなかではどこかに「それが任務だろ」といった気持ちがありました。でもやはりあのビルの中に、他人を助けるために入って行くという事は尋常なことでは無いことを改めて認識しました。   
それは強い使命感と、おそらく意識下でそれを育んだ「友の為の死」を善しとする信仰心だったのだろうとおもいました。      (KAZU)  

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