折り鶴の旅 (小さな鶴 改題)



鶴よ
一辺が十五センチの真四角な紙切れから折り出された小さな鶴よ
一羽、三羽、五羽
テーブルの上に並べられ 
飛び立つ時を待っている小さな鶴よ

大切な人を奪われた人たち
妻や子供らが
父や母や兄弟が
職場の仲間や友達が
君たちの仲間を作っている

鶴よ
人々が思いを込めて折っている小さな鶴よ

春になったら君たちの仲間がみんな集まってくる
そしてはるかな空に旅立つ
アリューシャン列島に沿って太平洋を渡る
まだ雪深いロッキーの山並みを越える
五大湖を過ぎたらハドソン川を目印に
マンハッタンの尽きるところ
そこが君たちの目的の地だ

鶴よ
人々が思いを込めて折り出した小さな鶴よ

しばらく羽根を休めたら君たちはまた舞いあがる
そして世界の国々の空を目指して飛んでゆく
すべての暴力を否定する
平和のメッセージを携えて

鶴よ
人々が思いを込めて折り出した小さな鶴よ


                                        住山一貞 作
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